『スカイ・クロラ』DVD&Blu-ray発売&レンタル開始

neko-vs2009-02-25

 私が4回劇場に足を運んだ映画『スカイ・クロラ』のDVDとBlu-rayが本日発売され、同時にレンタルも開始されます。

 「ホントに見る価値あるの?」という懐疑的な方も、「アニメはジブリしか見ない。」という頑迷固陋な方も、「映画館で見るなんてお金がもったいない。」という質素倹約な方も、これを機会にレンタルで御覧になってみてはいかがだろうか?

 ただし、この映画を観て好きになった方はきっともう1回観たくなるでしょう。そういう映画です。その場合は仕方ありません、DVDかBlu-rayを買いましょう。

 今までの押井映画は1回観ただけではその良さが分からず、3回目くらいから急激にその虜になっていき、それからは何度でも繰り返し観たくなる、という一般向けではないマニア向けの作りのものが多い、というイメージがあるでしょう。しかし、『スカイ・クロラ』に関しては違います。ドラマもある、濡れ場もある、恋愛が顕在的に描かれている(『イノセンス』でも『パトレイバー』でも恋愛は描かれてはいますが、直接的な表現は意図的に避けられてきました)、なおかつ哲学的テーマも同時に盛り込まれた映画です。観る度に味わいが深まるという押井映画の条件を満たしつつ、一般的な映画を見慣れている多くの人々にも広く支持されるような作品になっています。

 「ナウシカみたいにキャラクターの感情やドラマを通して人類や人間といった大きいテーマを表現するのはちょっと違うんじゃないか?」と以前発言していた押井さんが「一度ちゃんとドラマを描いてみようと思った。」と従来のスタイルを封印して作った映画、それが『スカイ・クロラ』です。

 この映画を初めて観た時はおそらく、ドラマの部分に目が行き、涙を流す人もいるでしょう。そして、一通り物語を把握してからもう一度この映画を観ると、表層的なドラマとはまた別のものを発見し、新たな感動となって、観る者の心を揺さぶります。ちなみに私が涙を流した映画はことごとく2回目以降の鑑賞の時に涙を流しています。そして、不思議なことに、観る度に涙腺が緩むポイントが変わるのです。私はそういう映画こそ本当の映画だと思います。泣ける映画が良い映画という意味ではありません。ここでいう「涙」は「鳥肌」や「感動」と置き換えても同じことです。涙はあくまでメタファーです(事実、涙といっても、目が潤む程度。本意気で泣いたら画面が見えなくなりますから)。ここで大事なことは「前に観た映画でも、観る度に違うことを感じることができる。前に観た映画だからって、次に観る時に見えるものは同じじゃない。」ということです。だから私は4度劇場へ行ったのです。

 ここで、皆さん大好きスタジオジブリの頭脳=鈴木敏夫プロデューサーの言葉を紹介しましょう。
「映画には2種類ある。全部見せてくれる映画と自分で考えることによって初めておもしろくなる映画。わかるものはわかる。わからないものは残しておいて自分の中で反芻すればいい。そうすれば映画はもっと豊かなものになる。」

 さらに、押井さんの言葉も紹介します。
「(映画を)何回観ればわかるかは、何をそこに見たいかによって変わる。100回観ても、求めるものが無ければ何回観てもわからないと思う。僕は映画はわかることが大事だとは思っていない。その映画を観て何を感じるかが大事。わかりたいんだったらアメリカ映画を1回観ればすぐわかる。100人いれば100人がわかるように作られている。それは逆に、100人同時にわかることしか語れないということ。」

 いやぁ、さすがですねぇ、2人ともズバリいいこと言いますねぇ。彼らに言わせると、「こんなのはド正論であって、今更言うほどのことではない。」らしいですが、このことを理解している映画監督やプロデューサー、そして観客がどれだけいるのでしょうか?甚だ疑問です。

 この映画に何を求めるか、それは人それぞれでしょうが、少なくとも、永遠の切ない恋、かっこいい戦闘機の空中戦、緊迫した命の駆け引き、戦争の本質、大人の本質、異国の美しい風景、バセットハウンドのかわいい仕草、気休めではない真実の希望、これらのうち一つでも興味があればこの映画は観るに値するでしょう。

映画『スカイ・クロラ』の台詞より
「昨日と今日は違う 今日と明日も きっと違うだろう
 いつも通る道でも 違うところを踏んで歩くことが出来る
 いつも通る道だからって 景色は同じじゃない」

 最後にもう一度繰り返します。
「前に観た映画でも、観る度に違うことを感じることができる。前に観た映画だからって、次に観る時に見えるものは同じじゃない。」