Time waits for no one.

neko-vs2007-07-07

7月6日(金)

雨。大雨。“悲しい出来事がこの雨だとしたら 傘を差しても濡れる肩が正直な気持ちだけど”by槇原敬之

ストラトで1曲録音。


7月7日(土)

ストラトで1曲録音。


時をかける少女』を観た。2006年7月公開のアニメ映画。原作は筒井康隆。監督は細田守。キャラクターデザインは『新世紀エヴァンゲリオン』も手がけた貞本義行が担当。小説版の映画化ではなく小説の約20年後を舞台にした続編である。

予告編、作品の詳細は公式HPを御覧下さい。
http://www.kadokawa.co.jp/tokikake/

ちなみに7月21日(土)夜9時に全国フジテレビ系で放送されるのでぜひ御覧下さい。


この映画の存在は同じく筒井さん原作のアニメ映画『パプリカ』を通じて知っていた。おもしろそうだと思っていたので観たのだ。そして、おもしろかったのだ。



ストーリーについて

仲良くキャッチボールをする2人の少年と1人の少女。彼らは現代の等身大の高校2年生。17歳の夏。友達以上、三角関係未満。いつまでもこうしてキャッチボールをしていたいけど、このままじゃいられない。時は待ってくれない。

ある日時間を移動できるタイムリープ能力を手にした少女。彼女がその力を使うのは世界平和のためでも好奇心のためでもない。身近な出来事をやり直すため、妹に食べられてしまったプリンを取り戻すため、小テストで100点を取るため、カラオケで100曲歌うため、そして恋からにげるため、また、恋を追いかけるために。

因果律、時間の不可逆を飛び越え、様々な“やり直し”を繰り返すうちに少女は自分の身勝手で他人の気持ちを弄んでいることに、そして恋から逃げている自分に気付く。この映画は、「決して戻らない時間をどうやって生きていくか」「気持ちを伝えること、それを受け止めることの意味」「未来を待ち続けるか、自分から走って迎えに行くか」といった質問を投げかけている気がする。

恋の芽生に対峙し、戸惑う少女という何の変哲も無い主人公のストーリーにタイムリープ能力というSF要素を加え、青春/恋愛ドラマを柱にした傑作ファンタジー作品として見事に昇華させている・・・一言で言うと、「爽やかな良い映画だ。」ということだ。何かを考えさせる、メッセージを伝えるということも映画にとっては大事だが、こういう漠然とした感動(泣けるとかそういった意味合いの感動ではない)を与えるということが何より大事だ、と、俺は、思う。


では、ストーリー以外の部分を中心に、さらに作品を詳しく見ていこう。(って俺は何者だ?)

映画が始まってまず初めに観る者を惹きつけるのはその映像のクオリティの高さだ。精細かつ色鮮やかであり、それでいて主張しすぎない背景が素晴らしい。

また、先日放送された『BSアニメ夜話』によると、“影なし技法”という、人物に影を付けるのではなく、動きだけで立体感を出すという非常に高度で手間のかかる手法が使われており、これにより人物が背景から浮かび上がって見えるようになっているのだという。あのキャラクターの存在感とリアリティはこういった工夫もあってより強いものになっている。なるほど。

そして声優陣のキャスティングもこの映画を非常に魅力的なものにしている。主な声の出演は仲里依紗原沙知絵石田卓也板倉光隆といった本職の声優ではない俳優たちによる布陣となっている。俺は誰が声をやっているかは知らずに観ていたが、まさか本職の声優じゃない人たちが声をやっているとは思わなかった。少なくともベテラン声優、人気声優は出演していないということはすぐにわかったが、彼らの演技はとても自然で、新人の声優か何かと思ったのだ。

“俳優を声優として起用”と聞くと、現在巷に溢れているようないわゆる人気俳優や芸人を起用して注目度を上げようという狙いで行われたキャスティングではないかと思う方もいるかもしれないが、この映画はそんなものでは決してない。登場人物たちの声の印象は個性的な声の本職声優に比べれば薄かったかもしれないが、そのことが逆に“どこにでもいる普通の高校生”というキャラクター性とそのリアリティを非常に強いものにしているのだ。このキャスティングは100人以上のオーディションにより選ばれたのだという。

中でも特に光っていたのは、明るく元気でお調子者のヒロインの紺野真琴を完璧に演じきった仲里依紗さん、そして頼れる存在であり謎めいた色気の漂う大人の女性である芳山和子を演じた原沙知絵さんの2人だった。

見慣れた顔の俳優が出ているドラマの登場人物のリアリティが希薄に感じられてしまうように、聞き慣れた声の声優が演じるアニメの登場人物も「あ、これはあの声優の声だ。」という雑念が混じるために、リアリティを感じるのが困難になるということは少なからずあるだろう(もちろん熟練した声優にはそれを演技力でカバーできる能力を持っている人もいる)。そこでこの映画では声を聞き慣れた本職声優ではなく、“声優としての声”を聞いたことのない俳優が声優をやることによって、観る者が初めて耳にする声の登場人物に出会うことができるようになっているのだ。それが作品に新鮮さと同時にリアリティを持たせることに繋がっているのだ。これは画期的な方法だ。

俺は今まで俳優を声優として起用することに対しては否定的な立場をとっていたが、単なる宣伝目的ではなく、確固たる演出理論と根拠に基づいてオーディションにより選出された人ならば声優だろうが俳優だろうが構わないという考え方を持つようになった。要するに、声優と俳優を区別する必要は無く、適材適所に人材を起用することが大事だということだ。



そして最後にもう一度言おう。7月21日(土)夜9時に全国フジテレビ系で放送されるのでぜひ御覧下さい。

時をかける少女 通常版 [DVD]

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