ツアー2007「狼の皮を被った羊」

タテさんとツーショット


博多百年蔵タテタカコさんのライヴを見に行った。この百年蔵は明治初頭に創業された酒屋さんの酒蔵の一部を改造した施設で、様々なイベントなどに利用されている。名前はよく耳にしていたが、ここに来たのは今日が最初だった。到着した瞬間、その建物の美しさに心奪われた。当時の建物が大切に受け継がれていて、時の重みを感じた。とにかく美しくてかっこいい!!!こういう古く美しい建物が大好きな俺にとっては垂涎ものだ。まさに天国。こんな天国で今日、天使の歌声と天使の奏でるピアノが聴けるのだ。しあわせだ。

しかし驚いた。客が多い。過半数が『情熱大陸』でタテさんを知った人たちだろう。その証拠に、『情熱大陸』が放送される前に発売した今日のチケット、別に急いで予約したわけでもないのに俺の整理番号は3番だった。それにしても多い。今年の3月に下北沢に見に行った時はあんなに客が少なかったのに。当日券も出ないようで、チケットはソールドアウトしている様子だった。しかもテレビカメラまで来ているではないか。ちなみに百年蔵ではドリンクチケットのかわりに酒瓶のフタが配布される。洒落ている。

会場は歴史を感じさせる梁が目を引く部屋で、とても素晴らしい雰囲気の空間だった。ステージの上には使い込まれた木目調のアップライトピアノが置かれ、一輪の花が飾られていた。俺は整理番号3番の実力で最前列ど真ん中の席に座った。

そしてタテさんがさり気なくステージに登場。驚いた。坊主頭になっていた。吉野さんの影響かな、と思いつつ、その佇まいからは音楽に対する強い覚悟、想い、情熱が伝わってきた。イスに座り、ストレッチと深呼吸をして、鍵盤の上に静かに置かれた両手。そしてその手がむき出しになったピアノの弦を鳴らした。やはり電子ピアノとは迫力が違っていた。俺の目の前2m足らずの近距離から放たれる音と声は魂を揺さぶり、えぐり、包んでくれる。

譜面台には歌詞やメモ、イラスト(落書き?)などが手書きで書かれたノートのページなどの様々な紙を入れてあるクリアポケットファイル(これが正式名称らしい)が置かれ、それをめくりながら歌を次々と歌っていった。気分でその紙を入れ替えて曲順を変えているようだ。靴を脱いだタテさんの足はペダルを踏まない時はリズムを刻んでいる。そして力強いピアノが光る『手の鳴る方へ』ではステージの床がドンドンと音を立てるくらい力強く踏み鳴らされていた。

タテさんは力の限り歌い、弾き、アンコール3曲を歌い終えると、深々とお辞儀をして、またさり気なく去っていった。

セットリストはこんな感じ。多分これで全部。途中から曲順があやふや。

1.えのぐ
2.手の鳴る方へ
3.宝石
4.混濁
5.157
6.月
7.ワスレナグサ
8.雷
9.心細い時にうたう歌
10.しゃぼん玉(童謡のカヴァー)
11.悲しくてやりきれない(ザ・フォーク・クルセダーズのカヴァー)
12.あの人
頬杖
秘密の物語
証明
(タイトル不明の新曲)
道程

雨は五月に降る時を待つ(吉野さんとの共作曲)
しあわせのうた

歌の余韻に浸りつつ、客がほとんど出て行った後、この素晴らしい部屋の写真を撮っておこうと、携帯電話でステージの写真を3枚撮影し、そして部屋全体の写真も撮ろうと部屋の後ろの方へ行こうとした時、見知らぬ男性に声をかけられた。手にはハンディカム。「長野朝日放送の者ですけど。」え?あなたたち、長野から来てたのか!というわけで、インタビューを受けることに。自分も長野県出身であることを告げた上で、“タテさんを好きになったきっかけ”、“タテさんの魅力”、“タテさんのほかのアーティストと違うところ”を問われたので、俺は俺なりに滔々と語った。それにしてもこの人、人を見る目がある。よりによって俺にインタビューをするとは。長野県出身で、『情熱大陸』以降のにわかファンではなく、なおかつタテさんの素晴らしさをよくわかっている(つもり)、そんな逸材はこの会場には俺一人しかいなかっただろう。

部屋から出ると、中庭ではタテさんがサイン会をやっているではないか!そこには長蛇の列。会場に来た客ほぼ全員が並んでいるようだった。俺は既に持っているCD『へんぺいそく』を、そこにサインをしてもらうためだけに物販で買い、列に並んだ。タテさんは一人ひとり、名前を尋ね、名前入りでサインをし、話をし、握手もして、希望者には一緒に写真を撮らせてあげたりしていたので、なかなか列は縮まなかった。そしてだいぶ経って俺の番がやってきた。俺は「今日もかっこよかったです。」と言ったり、さっきインタビューを受けてきたこと、自分も長野県出身であることを話した。“じゅんさんへ Tate Takako”というサインには猿のイラストも添えられていた。俺は勇気を振り絞って一緒に写真を撮ってもらった。とてもとても嬉しかった。

今日は素晴らしい一日だった。また一段と音楽が好きになった。

イキモノタチ

イキモノタチ