江戸川乱歩×丸尾末広

 待望の丸尾末広最新作『パノラマ島綺譚』を読んだ。江戸川乱歩の原作を日本が誇る漫画界の奇才・丸尾末広先生が鮮やかに漫画化した作品である。

 主人公・人見広介が夢見たユートピア、それは究極の美の楽園だった。彫刻、建築、自然、そして人体の美を集結させた地上の楽園。容赦の無い美。狂気が生み出す美。

 読み終わって私の脳裏に浮かんだ言葉は唯一文字、“美”である。美しい!!美しすぎる!!丸尾先生の画力とセンスと世界観がこれでもかというほど炸裂している。

 私は丸尾先生が描く女性が好きだ。レトロと形容されることが多い彼の画風はどちらかというと漫画的ではなく写実的である。だからこそ彼の描く女性は生々しく、いわゆる“マンガの美少女キャラ”と呼ばれるものとは一線を画し、生きた人間の女性の美しさを持っている。だから好きだ。女性だけではない、超精細に描きこまれた全ての画面が放つレトロな美しさに取り憑かれた者は二度とこの丸尾地獄からは抜け出せないだろう。一ページ一ページ、一コマ一コマを全て額に入れて飾りたい衝動に駆られたのは私だけではないはず。

 百聞は一見にしかず。あなたのその目で確かめて欲しい。30世紀に遺したいこの一冊、手に取ってみてはいかがだろう。今ならまだギリギリ書店の新刊コミックスのコーナーにあるでしょう。

パノラマ島綺譚 (BEAM COMIX)

パノラマ島綺譚 (BEAM COMIX)