Pity is akin to love.

6月22日(日)

 朝、睡眠時間25分の完全なる睡眠不足状態で1時間以上かけて福岡市へ。何をしに行ったかというと、「実用フランス語技能検定試験」を受けに行ったのだ。何故かというと、せっかく学校で習ったものを何らかの形で残したいと思ったからだった。

 第2外国語として2年間フランス語を勉強してはいたが、それから1年半のブランクがあったため、恐る恐る5級と4級をダブル受験することにしたのだった。

 結論から言うと、この決断は間違いだった。いざ試験が始まると、問題が非常に簡単に感じられ、スラスラと解答することができた。あの2年間、人並み程度に真面目に勉強していた甲斐があったようだ。

 試験終了後、直ちに模範解答が配布されたので、早速自己採点をしてみた。その結果は、5級が96点、4級が98点だった。嬉しいような悔しいような気分だった。3級を受けるべきだった。秋季には3級に挑戦してみようと思う。


6月23日(月)

映画の話をします
 
 この秋公開予定の北野武監督最新作『アキレスと亀』の公式HPがオープンした。イントロダクションや上映劇場情報、そして何より予告編映像が公開されたのである。この予告編がまたボリュームがあり、かなり映画の全容が想像できるものになっている。

http://www.office-kitano.co.jp/akiresu/

 「甲斐性無しの売れない画家とそれを支える良き理解者の妻」がこの映画の中心となっているようだ。予告編を見る限りでは「前2作は無茶をやっておこられたので、今回は当たる映画を真面目にやってます。」という監督の言葉通り、叙情的で心が揺さぶられる映画になっていると思われる。『HANA-BI』で描かれた「夫婦愛」というテーマをまた違った形で提示してくれそうな予感がする。

 『HANA-BI』といえば、監督自身の筆による挿入画の数々も非常に印象が強いのだが、画家が主人公である『アキレスと亀』にも北野画伯の描いた絵が多く登場するようだ。古今東西のアートを紹介するという画期的な番組である『たけしの誰でもピカソ』を企画し、10年以上に渡って出演し続けている北野武だからこその「アートへの想い」や「アートとの付き合い方」が彼の絵と共に映画に反映されることになるだろう。

 さらに、主人公の少年期の場面では日本の昭和30年代頃の風景も登場するようで、監督は「俺の生きた時代だもん、『ALWAYS』よりも本当の昭和30年代を上手く描く自信がある。」という趣旨の発言を前作公開時にしていたので、こちらにも注目したい。

「自分の映画作りとオーバーラップさせて、評価や成功と関係なく映画を撮り続けるべきだって思いを込めたんだ。才能のない人でも現実に向かい一生懸命やるべきっていう、芸術残酷物語だね。」


 ところで、北野武監督は先日開催されたモスクワ映画祭にて、これまでの映画作りにおいて「その心を揺さぶる文化の息吹を世界映画にもたらした」としてその功績を讃えられ、「特別功労賞」を受賞した。ロシアといえば、PanasonicのCMに"film director Takeshi Kitano"を起用したり、芸術性の高い作品ではあるが日本では一般ウケしなかった『Dolls』がヒットするなど、芸術家としての北野武の人気がうかがえる国である。

 この受賞に関して北野監督は記者会見で「ロシアの人は自分(北野監督)のことを過大評価している。数々の芸術家が出ているロシアで、表彰されるのはちょっと恥ずかしい。」とコメントし、照れ笑いしたという。なんとも照れ屋の北野監督らしいコメントだ。そういえば『HANA-BI』でヴェネチア国際映画祭のグランプリ(金獅子賞)を受賞した時も、ステージに上がり金獅子像を受け取る監督の頭を掻きながら照れ笑いをする姿が非常に印象的だった。

 また、去年、北野監督は、カンヌで『大日本人』の松本人志監督と対面した際には相手が芸人としても映画監督としても後輩であるにも関わらず、お互いに照れてしまってあまり話ができなかったのだという。そういった照れ屋な人柄も含めてたけしさんはかっこいいと思う。

 よく「謙遜は日本人の美徳」などというが、「日本人だから」とか「相手によく思われたい」とか考えた上での“計算ずくの謙遜”なんてかっこよくもなんともない。ただ社会生活の中で便利であるというだけで。その行為に“謙遜”という名前が与えられた瞬間にそれは作為的なものでしかなくなってしまうような気がする。

 「計算ずくの謙遜なんかより、本心からの不遜や傲慢や増長の方がよっぽどマシさ。」とちょっとだけ思ったりする。ん、話が脱線した。


 松本人志監督といえば、9年間連載していた映画批評『シネマ坊主』を休載し、「そろそろ人の映画を『ああだ、こうだ』と言ってるんじゃなくて、純粋に評価される側に立ちたいという気持ちになりました。」と映画監督として本気でやっていく決意を持って次回作に取り組んでいるのだという。次回作の公開は来年になるようだ。

 休載にあたって『シネマ坊主』に寄せたコメントによると、「テレビでお笑いの仕事をしながら、人を泣かせる映画は作れない。頭の切り替えができないから。」ということらしいので、次回作も笑いの要素は入ってくるものと思われる。ただし、同じお笑い出身映画監督の大先輩である北野監督が常にテレビのレギュラー番組でお茶の間を笑わせながら、そのテレビ番組の合間を縫い、週替わりで少しずつ撮影するという環境の中でもシリアスな映画を幾つも作り上げているという事実を鑑みれば、いつか松本監督がシリアス路線の映画を撮る可能性はゼロではないだろう。

 北野監督も映画批評の連載をしていたという点も含めて何かと共通点の多いこの二人の監督に、これからも注目せざるを得ない私がいます。