a pile of stones/賽の河原

neko-vs2007-06-20

独りで映画館に行き、北野武監督最新作『監督・ばんざい!』を観た。独りで映画館に行くという行為はこれが生まれて初めてだ。

上映開始時間ギリギリにシアターに入ると、客はほとんどおらず、「入るシアター間違えたかな?」とも思ったが、確かに場所はあっている。6番シアター。しかし、よーく見ると、ほんの数人だが客が座っている。「やった。これで貸切同然で映画を楽しめる!」と思ったのも束の間、敵は隣人だった。

俺の隣、一つの席を隔てて座っている男。この男は、「あははは。」と割と大きい声で笑う。それも頻繁に。俺だって鬼じゃない。純粋に映画を見て笑いをこらえられない人を責めるつもりは毛頭無い。俺だって笑うところはしっかり笑ったさ、“オギノ シキゾウ”とか、“ジダン”とか。しかし、問題はこの男の笑うポイントがことごとく“ズレている”ということだったのだ。「いや、ここは別に笑うとこじゃないだろ。」というところで声を出して笑う。これが気になって気になって仕方なかった。かといって、全席指定なので席を移る勇気も出ない。いや、この男の笑い声ならこの空間の中にいる限り、どこからでも聞こえるだろう。

笑うなとは言わない。声を出すなとは言わない。それにしても、「あははは、ゾマホン。はは、ゾ、ゾマホン。」って、もはや笑いではなく喋っているではないか。

そんな迷惑なこの男、普段は一体どのような暮らしをしているのだろうか。そりゃあ、笑いっぱなしで楽しそうに暮らしてるんだろうな。

肝心のこの映画を観ての感想は、「ハチャメチャだ、こりゃ。」と言うしかない。それでいいと思う。皮肉、風刺、時事、パロディ、ギャグ、下ネタ、様々な要素で笑わせてくれる奇想天外バラエティ・ムービーであることは間違いない。

俺みたいな“一見、他人の目を気にしていないようで人一倍気にしている”人間は映画館という場所では素直に映画にのめり込むことはできないのかもしれない。もちろんそれはその時の劇場の環境の良し悪しにも依るが。できれば自分の部屋で、独りで、じっくり味わい、笑いたいだけ笑って楽しみたい、そんな映画だった。


映画館から帰る途中、新星堂に寄り、CDを1枚買った。THE WHITE STRIPESの最新アルバム『Icky Thump』だ。今作はエンジニアにジョー・チカレリを迎えて作ったらしい。ジョー・チカレリといえば、“フランク・ザッパエルトン・ジョンなどの大物を手がける・・・”などと紹介されがちだが、大事なことをお忘れではなかろうか。そう、日本が誇る偉大なるバンド、fOULのアルバム3枚を手がけ、さらに「生まれてきたからには一度はfOULを体感すべし。」という言葉まで残している、あのジョー・チカレリなのだ。

イッキー・サンプ

イッキー・サンプ

今作のサウンドも、エンジニアが変わろうとも、相変わらずのストライプス・サウンドだ。まず、メグ・ホワイトのバスドラムが異様にデカい。そして太い。あまりにもバスドラの音がデカ過ぎるので、ギターの音を大きい音で聴くためにステレオのボリュームを上げようものなら、階下階上数多の住人から苦情が来ること間違いなしだろう。

そしてやはりジャック・ホワイトの素晴らしいギター・サウンド。「どうしたらこんなにかっこいい音が出るんだろう。」といつも思う。基本となるトーンだけでもかっこいいのに、ビッグ・マフ、ワーミー、ボトルネックなどを自在に使いこなし、シンプル且つ強烈な彩をそこへ付け加えている。

ジミヘンもそうだったと思うが、ジャック・ホワイトはギター、アンプ、エフェクター、演奏技法それぞれの性質・特性を熟知し、それらを適切に組み合わせて、かっこいい音、曲に合った音を、鳴らしたい時に、鳴らしたいように鳴らすことができる抜群のセンスを持っているギタリストだと思う。
見るべし!!『Icky Thump』ライヴ映像

メグ・ホワイトが茶髪に…『Icky Thump』PV


ジャック・ホワイトの爪の垢を煎じて飲むべき俺も俺なりにギターを弾き、1曲録音した。4時間以上テレキャスターと格闘した結果約5分30秒の曲を録音した。その場その場で曲の展開を作っていく上に、拙い俺の腕前では、たった1曲にも、かくも多大な時間を要してしまう。

そしてまだ録音すべき曲は2、いや、3曲?もしかして4曲?も残っている。いつもなら、10曲出揃った時点でやめにするのだが、前作から10ヶ月も間が開いてしまっているので、溜まっているモノが溢れ出てきてしまうのだろうか。