ノアの方舟

neko-vs2007-10-11

チンパンニュースチャンネルSP』を見た。ゴメスさん、かわい過ぎです。毎度毎度、笑顔をありがとう。

しかし、今日は笑ってばかりもいられなかった。番組の最後は虐待を受けた動物を保護しているコロンビアの女性の特集だった。


その女性の名はアナ・フリア・トレスさん。彼女は人間による虐待で傷を負った動物たちを引き取り、己の人生をかけて全力で世話をしている。この保護センターには現在48種800頭羽の動物たちが保護されており、そのほとんどが何かしらの障害を負っている。

以下のような動物たちがここで暮らしている。

●金持ちの気まぐれで子どもの時に密輸された後、「大きくなったのでもういらない。」という理由で光の当たることのない狭いオリに閉じ込められ、長い間エサを与えられることなく、骨と皮だけになったライオン。

●逃げることのできない狭いオリの中で生きたまま灯油をかけられ、火を付けられ、全身にやけどを負ったサル。

●「飼い主の子供を引っ掻いた。」という理由で両前足を切断され、血がダラダラと流れ出るまま路上に捨てられたタイガーキャット。

●麻薬密売組織のボスが強さの象徴のためだけに密輸し、ディスコなどに連れて行く際人間を傷つけないように全ての爪をペンチで無理矢理引き抜いたために全ての足が二倍に腫れ上がった状態で保護されたライオン。

この爪を剥がされたライオンは施設に来た当初は人間を怖がり、威嚇する日々が続いた。トレスさんにも何度も襲いかかろうとしていたが、毎日オリの前で「ごめんね…人間の勝手で苦しめてごめんね。」と語りかけ続けていると、ある日その爪の無い前足で彼女を優しく抱いてくれたのだという。今ではまるで猫のように無邪気な表情で彼女に前足を絡ませ、甘える仕草を見せるようになっている。

トレスさんが毎日訪れるという場所が施設内にある。そこにはこの施設にやってきて生涯を終えた動物たちの写真が飾られていた。

以下のような動物たちの、遺影だった。

●「むしゃくしゃしたから。」という理由で飼い主に目をえぐられ、そのままの状態で飼われ続けていたタイガーキャット。

●荷馬車が引けなくなったという理由で生きたまま灯油をかけられ火をつけられ、全身にやけどを負った馬。荷馬車が引けなくなったのは妊娠していたからだった。

アルコール中毒の飼い主に虐待を受け、顔の形がなくなるまで殴られ、目がつぶれ、歯もほとんど折れてしまったクモザル。

この顔を潰されてしまったクモザルは視力を完全に失い、飼い主の虐待から逃れる術すら失っていた。ある日飼い主の家からこの世のものとは思えないような鳴き声が聞こえ、近所の人が警察に通報、瀕死の状態で保護された。施設に運び込まれ、トレスさんや獣医の看病の結果三日後にはものを食べられるようになった。人の手を借りて歩けるようにもなった。しかし、その数日後、静かに息を引き取った。死因は頭を強く殴られたことによる脳挫傷だった。

虐待を受け続け短い生涯を終えたクモザル。しかし、施設で息を引き取った時、その表情は実に穏やかだったという。

「動物はこんなひどいことをした人間をそれでも許してくれるの。裏切られ、傷つけられたにもかかわらず…」トレスさんは涙ながらにこう語る。

日本国内で最も多い動物の死因は殺処分。一日900頭もの犬や猫が殺されている…


涙が止まらなかった。録画したこの番組を見返しながらこの日記を書いている今も、涙が溢れている。

人間はここまで残酷なことができるのか。何も悪くない、何の罪も無い動物たちにこんなにひどい仕打ちができるのか。自分のために働いてくれていた馬が妊娠して荷馬車を引けなくなったら、生きたまま火を付けるのか。人なつっこく、温厚なクモザルを顔が潰れるまで殴り続けるのか。もはや悪魔よりも人間は邪悪なのか。悪魔など足元にも及ばないのか。所詮、悪魔も人間が作り出した分身に過ぎないのか。

俺が泣いていた理由は人間の邪悪さに絶望を感じていたから、だけではない。かつて虐待を受けた動物たちが、自分たちを世話してくれる人だけではなく、初めて施設を訪れた人にさえ、穏やかな表情を見せていたから。その動物たちの心に胸を貫かれたからだ。


それは遠い国の話ではない。ここ日本で、ペットブームの影で毎日捨てられる動物たち。そして殺処分されていく動物たち。

殺している、毎日毎日、殺しているのだ。かつて一緒に生きていくと誓った家族を、捨てて、殺しているのだ。寂しいから、慰めて欲しいから、無理を言って一緒に暮らしてもらっているはずの同居人をダンボールに詰め込み、ゴミ同然に捨てるのだ。そして、翌日になれば平然と善良市民の皮を被って、“幸せな人生”とやらを送っていくのだ、人間は。

最も高度な知能を持ち、最も豊かな感情を持ち、最も邪悪な心を持った生き物なのだ、人間は。他の動物よりも“劣っている”という事実を自覚しなければいけないのだ、人間は。“神の似姿”などと傲慢な態度をとることは決して許され得ぬ愚行だ。真に崇高なのは人間以外の動物たちだ。

それでも人間は己の邪悪さ、愚かさと戦うための知性があるはずだ。それすらできないのなら…