クシャナしのぶ

 今夜の金曜ロードショーは『風の谷のナウシカ』ですよ。榊原良子さん演じるクシャナの出番が少な過ぎる!っと、それは置いといて・・・

 WEEZERの新譜が先日届いた。っと、それは置いといて・・・

 WEEZERと一緒に注文しておいた『その男、凶暴につき オリジナル・サウンドトラック』も届いた。今はWEEZERよりもこちらばかり聴いている。曲数も収録時間も少ないが、とてもかっこよく、映画の場面を思い浮かべながら聴くと、心地よい憂鬱と虚無感が包み込んでくれる。フランスの作曲家エリック・サティの『グノシエンヌ第1番』をアレンジした『我妻のテーマ』は俺が初めてこの映画を観た時に強烈な印象を受けた曲だ。初めて聴いたのに「あれ?これ何だか懐かしいような。」と思ってしまったほどだ。狂気とユーモア、凶暴性と愛情の入り混じったアンビバレントな主人公・我妻にまさにピッタリのエキゾチックかつひょうひょうとした雰囲気を持つ曲だ。約100年前に作られた曲なのに、この映画のために作った曲かのように思えて仕方が無い。そしてこの映画のメイン・テーマ『その男、凶暴につき』は音楽担当の久米大作さんのオリジナル曲であるが、俺はサティの曲よりもこちらの方が好きだ(僅差だが)。刑事モノらしく緊張感に満ちたピアノとサックスのアンサンブルが非常にクールであるが、爽快感や高揚感などは一切感じられず、救いの無い暗澹とした重い空気が曲全体を支配している。

 「北野映画久石譲。」というイメージが強いが、俺は北野映画の音楽の中では久米大作さんの担当した『その男、凶暴につき』が一番好きだ。

 しかし、こんなマイナーな映画のサントラの話なんて、何とマイナーな日記だろうか。一体誰が読みたがるというんだ?まぁ、こんな素晴らしい映画がマイナーであるというこの国の状況が異常なのだろう。別に海外での評価が高いから俺が北野映画を好きだと言いたいわけではないが、芸術や映画に対して高い感心を持つフランスなどのヨーロッパ圏ではタケシ・キタノは“マエストロ”と呼ばれ、「黒澤明北野武は誰でも知っている。」といわれるほど高名なのに対して、日本では映画監督としての彼のことをよく知っている人間は少数派である。日本ではわずか3週間で上映打ち切りとなった『ソナチネ』が、フランスではカンヌ映画祭で上映され、一流映画誌が選ぶ“世界の映画年間ベスト10”の第7位にランクされ、イギリスではBBCにより“21世紀に残したい映画100本”に選ばれた。一体何なんだ、このギャップは?

 俺が思うに、日本人は一から十までいちいち説明してくれるような親切な映画じゃないと「難解だ。」とか「独りよがりの映画だ。」とかいう感想を持つのだろう。一言で片付けるなら、感性貧困。もしくは表現と理解を言葉に頼りすぎているのかもしれない。そして“純愛”や“環境問題”などの明確なテーマを必要とし過ぎているような気もする。北野監督の言葉を借りるなら、「よく“この映画ではあなたは何が言いたいんですか?”って訊く人いるけど、口で言えるぐらいなら映画撮らないだろっていう・・・」ということでしょう。

 ※知らない人にさらっと説明する。この『その男、凶暴につき』は北野武初監督作品であり、主演もビートたけしである。脚本は北野武ではない人物の名前がクレジットされてはいるが、シナリオも台詞もほとんど北野監督が書き変えてしまっている。1989年公開。

 ちなみに俺の中ではこの『その男、凶暴につき』と『HANA-BI』と『ソナチネ』と『3-4x10月』は順位が付けられないくらい大好きな北野映画である。皆さんも一度、御覧になってはいかがだろうか。どーですか、お客さん!

北野武のフィルモグラフィを振り返りましょう 1989-2003
http://jp.youtube.com/watch?v=mb3HVCw50es