隣の芝と浮世絵包み紙


 押井守最新作『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』と宮崎駿最新作『崖の上のポニョ』の試写会招待券を両方とも入手した。ふと、この2枚の招待券を並べて気付いた。『スカイ・クロラ』のコピーが「もう一度、生まれてきたいと思う?」で、『ポニョ』のコピーが「生まれてきてよかった。」なのだ!これはますますこの二本とも観ずにはいられない。6日に『スカイ・クロラ』、10日に『ポニョ』を観てきます。『スカイ・クロラ』は8月2日以降の一般公開時に友達と観に行く約束をしてあり、更にもう1回一人で観に行こうと思っているので、今年中に3回は観ることになりそうだ。


 今日という歴史的な日、押井守が『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングに出演した!が、押井さんが登場しても客席からは「キャー」のカケラも出なかった。タモさんが押井さんの代表作などを紹介しても「しーーん・・・」、『うる星やつら』の名前が出ても「・・・・・。」(やっぱ今の若い人ってうる星すら知らないのか)、とはいえ、押井さんの人懐っこい笑顔と和やかなトークで会場から笑いが出てきて、「なんかカワイイおじさんだなぁ。」くらいの印象は与えることはできたようだ。肝心の映画についてはほとんど触れられず、今回の出演が宣伝になったかは怪しい・・・。

 タモさんが押井さんに「カワイイっすね。童顔ですね。」と言っていたのが少しおもしろかった。この“童顔”は押井さん自身も自覚していることであり、また、かつて、若き日の押井さんを称して「天才少年」と呼ばれていたとかいないとか(当時押井さんは20代後半〜30代前半)。

 戦闘機の話題になり、マニアックなワード(“震電”、“飛燕”、“二重反転”など)が出てきても、さすがにタモさん、飛行機のことには詳しいようで、会話が成立していた。そして「100分の1アンケート」のコーナーになり、押井さんが「僕は犬が大好きで、」と口を開く・・・やっぱり。「バセットハウンドと暮らしたことがある人」「スイッチオン!」「0」予想通りバセットハウンドを出してきた押井さん、自分の映画だろうとお昼の長寿番組だろうと関係無いみたいです。とにかく犬を出す!犬命!

 明日のゲストは宮崎駿!ではなく、谷原章介!です。無難に『スカイ・クロラ』出演者でつなげてきました。

この歴史的テレフォンショッキングの全容が知りたい方はこちら→http://www007.upp.so-net.ne.jp/iitomo/2008/20080703.htm

 今回改めて痛感した。押井さんの日本における知名度の低さを。

 かつて日本には浮世絵という素晴らしい芸術が存在した。しかし、その浮世絵は海外に輸出される陶器の包み紙として使用されるほど安価なものとして出回っていた。ヨーロッパでは、その包み紙に描かれた芸術の素晴らしさに気付いた印象派の画家たちに大きな衝撃と多大な影響を与えた。

「私は日本人の目を持ちたい。」 フィンセント・ファン・ゴッホ

 確かに日本人は素晴らしい芸術を生み出す才能を持っている。がしかし、その素晴らしさに気付かず、忘れ、捨て去ってしまおうとする傾向が強いように思える。未だに「ハリウッドが映画の聖地」だなんて神話にすがっている日本人は多い。「日本車よりも外車のほうが乗っていて自慢できる。」なんて哀れな幻想を抱いているヒルズ族もいる。

 押井守監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』も北野武監督の『HANA-BI』も海外で高い評価を得た後にようやく“逆輸入”のような形で日本国内で再評価がされるようになった(とはいえ、まだまだ不十分な評価には変わり無いが)のだ。例を挙げればまだまだそういった“浮世絵包み紙”はたくさんある。日本人よ、真実を見る目と心を養うべし。

 海外(特にフランスなどのヨーロッパ圏)の人々の中にどれだけ日本の文化に憧れを持った人がいるか、日本人はもっとよく知るべきであり、そのことを誇りにするべきだ。技術力や経済力だけが日本の価値ではないということを世界に、そして己に宣言する時は今だ!いや、遅すぎるくらいだ!