Wonderful Bassmen

私の考える日本四大ベーシストについて少し語ろう

射守矢雄 (bloodthirsty butchers)

“唯一無二”という言葉はこの人のためにあるのではなかろうか。私がブッチャーズを初めて聴いた時、まず耳に飛び込んできたのはそれまでに全く聴いたことのない個性的なベースの音色だった。弾いているのはエレキベース以外の何物でもないのだが、そこから奏でられる音の広がりと深みはまるでオーケストラのようだ。その深みを生み出しているのは彼独特のコード弾き&アルペジオだ。演奏の要所要所でコード弾きやアルペジオを使用するベーシストはいくらでもいるが、彼の場合は演奏の大部分で複数の弦を鳴らしている。このバンドのリーダーでありギターヴォーカルの吉村さんをして「俺のギターは射守矢のベースにただ被せてるだけ。このバンドの要はベース。」と言わしめるほどバンドアンサンブルに占める割合が一般的なバンドに比べ遥かに大きい。だからこそ吉村さんの自由奔放で即興的なギタープレイが発揮できるのだろう。

おススメCDは『未完成』!、『kocorono』、『banging the drum』。

平松学 (fOUL)

嗚呼、ワンダフル、アメイジング、インクレディブル、アンビリーバブル、ビューティフル・・・彼のベースプレイを形容するには一体どんな言葉を使ったらいいのだろう?奇妙なのにメロディアス。攻撃的なのに優しい。悪魔的なのに神々しい。雄大な自然、荘厳な大聖堂、漆黒の宇宙・・・、そのベースの音色にには聴く者にあらゆる風景を見せ、異世界へといざなう魔力がある。明らかに射守矢さんに影響を受けたと思しきコード弾き&アルペジオを使用しているが(彼自身ブッチャーズの大ファンである)、射守矢さんほどその使用頻度は高くない。コード弾きでも単音弾きでも決してブレることのない“平松節”と呼ぶしかない個性的で変態的なフレーズが最大の魅力。「ベースにこんな使い方があったのか!」と驚くこと必至の奇想天外な音世界。今「一番好きなベーシストは?」と私が尋ねられたら、「射守矢さんと平松さん。」と答えるしかないであろう。

おススメCDは『Dostoevsky Groove』!、『Husserliana』、『煉獄のなかで』。


二宮友和 (eastern youth)

この四人の中では最も技巧派と呼びうるベースプレイヤーではなかろうか。フレットレスの指板の上を縦横無尽に、そして正確無比に動き回る指使いにライヴでは見とれてしまうこと必至だ。イースタンユースに加入する前はギタリストだったというのが信じられないほど真っ当なベーシストにも思えるが、過剰なまでに作り込まれたフレーズをいとも簡単そうに弾きこなしてしまうあたりは天才的な音楽的勘を持った稀有なベーシストであることを感じさせる。フレットレスを生かした柔らかな音から、パーカッシヴな音、太い低音、鮮やかなコード弾きなど、ありとあらゆるテクニックを抜群のセンスで駆使し、楽曲に躍動感と情感を与える。あれだけのテクニックがあればスタジオミュージシャンにもなれそうな気もするが、それでもイースタンで弾き続ける姿勢がかっこいい。自身がリーダーを務めるバンド“ひょうたん”ではギターヴォーカルとして活躍している。

おススメCDは『感受性応答セヨ』!、『365歩のブルース』、『孤立無援の花』。


小町裕 (あぶらだこ)

83年のバンド結成当初から現在に至るまであぶらだこを支えるベーシスト。全ての作詞とほぼ全ての作曲をするヴォーカルの長谷川裕倫さんを除けば唯一のオリジナルメンバー。複雑怪奇なあぶらだこの楽曲を弾きこなす技術と記憶力と体力を兼ね備えた人間自体この世界には少ないだろうが、個性豊かなメンバーの中でも彼は特に代替の利かない人材であろう。あぶらだこの特徴の一つにギターとベースのユニゾンを多用しているという点が挙げられるが、ギターで弾くのも大変な複雑かつ高速のフレーズを仁王立ちで堂々と弾きこなす彼の姿はとても素敵だ。また、ギターとのユニゾンではない場面では小町さんの個性がさらに光る。特に名盤『あぶらだこ』(亀盤)では美しすぎるベースのメロディが存分に楽しめる。

おススメCDは『あぶらだこ』(通称:亀盤)!、『あぶらだこ』(青盤)、『あぶらだこ』(舟盤)


亀盤収録の名曲『秘境にて』をベースでコピーするという猛者の動画はこちら(スゴイ・・・)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1326540